2015年2月8日日曜日

インドのテント生活者について③

通勤ルート上のある曲がり角に、テント生活者の一団がいた。
毎日いるので、ためしに車内から手を振ってみると、女性たちは手を振り返してくれた。
それから、ささやかな国際交流は毎朝の楽しみになり、寒くなるまでしばらく続いた。

ある朝、彼らの前を通る時、雰囲気が違う事に気がついた。
女性たちがいつもよりきらびやかなサリーを身にまとい、こちらに向かって並んでいた。
そしていつも以上ににこやかに手を振ってくれた。
サリーはインドの伝統衣装だが、日本の着物のように勝負どころでしか着ないものではなく、多分、普段使いサリーと勝負サリーを使い分けている。
その時は明らかにきれいでぴかぴかだったので、勝負サリーだったのではないか。
オレンジ、赤、緑など色とりどりの布と、金ぴかの装飾は、彼女たちの黒い肌に良く映えていた。
「こりゃ朝からいいもん見たワイ」
といい気分で仕事に入れたのは良かったが、
翌朝、彼らは忽然と姿を消していたのである。

出発前にいつもの日本人にお別れを言おう、と考えてくれたのか、移動の時はいつも衣装を変えるのかは全然わからない。
たまたまあの一団に、イベント好きのお祭り娘がいただけかもしれない。
しかし、場所を変える時におめかしするという工夫が、この思い出を作ってくれたのは間違いない。

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